アバディエル（Abdiel）-神に忠誠を誓う唯一の天使

　アバディエル（Abdiel）は、聖書の『歴代誌』に登場する人間の名前として初めて記録されていますが、後世の文学や神話においては、忠誠心と勇気の象徴としての天使として再解釈されました。

聖書におけるアバディエル

　アバディエルは、聖書の『歴代誌』第5章第15節に登場します。ここでは、アバディエルはギレアドに住むガド族の一員として紹介されています。この時点では、アバディエルは天使ではなく、人間としての地位にあります。

ジョン・ミルトンの『失楽園』

　アバディエルが天使として最も有名になったのは、ジョン・ミルトンの17世紀の叙事詩『失楽園』です。ここでは、アバディエルはサタンによる反乱に唯一反対し、神に忠誠を誓う天使として描かれています。彼はサタンに対して勇敢に立ち向かい、神の命令を守ることを選びました。この行動は、忠誠心と道徳的勇気の象徴として広く知られています。ミルトンの『失楽園』におけるアバディエルは、サタンに対する戦いにおいて重要な役割を果たし、彼の剣でサタンを打ち倒します。このシーンは、文学史上でも最も印象的な場面の一つとして記憶されています。

アナトール・フランスの『天使の反乱』

　アナトール・フランスの1914年の小説『天使の反乱』でも、アバディエルは「アーケード」という名前で登場します。この作品では、天使の階層における反乱と忠誠心のテーマがさらに深められています。

象徴的な意味

　アバディエルは、忠誠心と道徳的勇気の象徴として広く認識されています。彼の物語は、個人の勇気と信念の力についての教訓を提供し、特に道徳的な危機に直面した際に重要なメッセージを伝えています。また、アバディエルは信仰と神への信頼を象徴する存在としても見られています。彼の勇気と忠誠心は、困難に直面しても正しい道を選ぶことの重要性を示しています。現代においても、アバディエルは信仰や道徳的なテーマに関連して言及されることがあります。彼の物語は、困難な状況に直面しても、正義と道徳を守ることの重要性を教えてくれます。