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ヴァルキュリヤの神話に迫る:戦死者を選ぶ女神たち

■雑記

ヴァルキュリヤの神話

 ヴァルキュリヤ(またはヴァルキリー、ワルキューレ)は、北欧神話において重要な役割を果たす戦乙女たちです。その名前は古ノルド語で「戦死者を選ぶ者」を意味し、彼女たちは戦場で生死を司り、勇敢な戦士の魂をオーディンの館ヴァルハラへ導く役目を担っています。ヴァルキュリヤは単なる戦場の使者ではなく、北欧神話全体において運命や勇気、名誉を象徴する存在でもあります。彼女たちは光り輝く鎧に身を包み、馬に乗って戦場に現れます。その姿は選ばれた者にしか見えず、彼女たちが現れることは戦士にとって名誉とされました。また、ヴァルキュリヤはエインヘリャル(ヴァルハラで訓練を受ける戦士たち)に蜜酒を注いで給仕する役割も持ちます。彼女たちは英雄詩や伝承の中でしばしば人間との恋愛関係にも描かれ、王族の娘として登場することもあります。

ヴァルキュリヤのエピソード

 ヴァルキュリヤに関する神話には多くの興味深いエピソードがあります。特に有名なのがブリュンヒルドの物語です。ブリュンヒルドはオーディンの命令に背いたため、人間界へ追放され眠り続ける罰を受けますが、英雄シグルズによって目覚めさせられるという伝説的なエピソードがあります。この物語は『古エッダ』や『ヴォルスンガ・サガ』などに記されています。ブリュンヒルドはオーディンに仕えるヴァルキュリヤとして登場しますが、主神オーディンの命令に背いたため罰を受け、深い眠りにつかされます。彼女は炎に囲まれた館で眠り続けており、恐れを知らぬ者だけがその炎を越え、彼女を目覚めさせることができるとされていました。この設定が物語の重要な出発点となります。英雄シグルズがその炎を越え、ブリュンヒルドを目覚めさせたことで二人は出会います。シグルズは竜ファフニールを討ち取った勇者であり、その強さと勇気によってブリュンヒルドの心を掴みます。二人は結婚を約束しますが、この約束は後に破られることになります。シグルズは後にギューキ王の娘グズルーンと結婚します。この結婚には魔法による記憶喪失が関わっており、シグルズはブリュンヒルドとの約束を忘れてしまいます。一方で、シグルズは義兄弟となったグンナル(グズルーンの兄)のためにブリュンヒルドとの結婚を助けることになります。炎を越えられないグンナルに代わり、シグルズが変装してブリュンヒルドのもとへ行き、彼女を説得して結婚させるという欺瞞が行われます。しかし、この事実が後に明らかになると、ブリュンヒルドは裏切られた怒りと悲しみから復讐心を抱きます。彼女は夫グンナルをそそのかし、シグルズを暗殺するよう仕向けます。シグルズは命を落とし、その死を知ったブリュンヒルドは自ら命を絶ちます。そして彼女はシグルズと同じ火葬台で焼かれることを望み、その願い通りになります。

 また、「スヴァーヴァとヘルギ」の物語も知られています。スヴァーヴァというヴァルキュリヤは英雄ヘルギと恋仲になり、彼を助けて戦いで勝利させるという内容です。ノルウェーの王ヒョルヴァルズには、成人しても言葉を話さない息子がいました。この王子には名前もなく、無口で物静かな人物でした。ある日、9人のヴァルキュリヤ(戦乙女)が馬に乗って彼の前を通り過ぎます。その中で特に目を引いたのがスヴァーヴァという名のヴァルキュリヤでした。彼女は王子に近づき、「ヘルギ(聖なる者)」という名前を与えます。この瞬間、ヘルギは初めて言葉を発し、自分に名前を与えたスヴァーヴァに求婚します。スヴァーヴァはエイリミ王の娘でありながらヴァルキュリヤとして活動していました。彼女はヘルギの求婚を受け入れ、二人は深く愛し合うようになります。ただし、スヴァーヴァはその後もヴァルキュリヤとしての役割を続け、空や海を駆け巡りながら戦場でヘルギを守る存在となります。ヘルギはスヴァーヴァから黄金の剣を授かり、この剣を用いて数々の戦いで勝利を収めます。彼は祖父スヴァーヴニル王の仇であるフローズマル王を討ち取り、その名声を高めました。その後、ヘルギはエイリミ王に娘スヴァーヴァとの結婚を申し出て許されます。こうして二人は正式に夫婦となりましたが、スヴァーヴァは父エイリミ王とともに暮らし、ヘルギは戦場へ赴く日々が続きました。そして、物語は悲劇的な展開へと進みます。ヘルギは女巨人による呪いを受け、その影響で決闘中に致命傷を負います。死期が迫ったヘルギは親友シガールをエイリミ王のもとへ送り、スヴァーヴァに最後のお別れを伝えさせます。スヴァーヴァは急ぎ駆けつけますが、最期の時には間に合わず、愛する夫ヘルギが息絶える姿を見ることになります。深い悲しみに包まれたスヴァーヴァは、自分が他の男性と結婚することは決してないと誓います。そして二人の物語はここで終わりますが、『古エッダ』では彼らが生まれ変わり、新たな姿で再び出会う運命にあると示唆されています。

さらに、ヴァルキュリヤはその能力として形態変化(白鳥など)や魔法的な力を持つことでも知られています。これらの特徴は「白鳥乙女」の伝説とも結びつき、北欧神話全体の豊かな象徴性を示しています。

その他の紹介

 現代では、ヴァルキュリヤは文学や映画、ゲームなど多くのメディアで取り上げられています。例えば、リヒャルト・ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』では、「ワルキューレ」として登場し、その壮大な音楽と物語が世界中で知られています。また、日本ではゲーム『戦場のヴァルキュリア』シリーズが人気で、この作品ではヴァルキュリア人という設定がストーリーに取り入れられています。このシリーズでは、北欧神話から着想を得たキャラクターや設定が登場し、多くのファンを魅了しています。さらに、『ヴァルキュリヤ内燃機関』という漫画作品もあり、この作品では北欧神話的要素を取り入れながら、独自の世界観が描かれています。

まとめ

 ヴァルキュリヤは北欧神話において重要な存在であり、その役割や象徴性は多岐にわたります。彼女たちは戦場で生死を司るだけでなく、人間との感情的な物語や文化的影響も大きく、その魅力は現代まで続いています。また、多くのメディア作品で再解釈され、新しい世代にも親しまれる存在となっています。

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